鼻水吸引器を使うなら知っておきたい乳児の鼻水の基礎知識

乳児の育児は、まさに時間と体力との戦いです。そこで時間の節約につながる便利な子育てグッズなど、使えるものは総動員して自分の体を休める時間を作ることが、結局は育児という長いマラソンを乗り切るためのコツになります。

そんな子育て便利グッズのひとつに、「鼻水吸引器」があります。実はこの鼻水吸引器、先輩ママやパパたちから「買ってよかった」「思った以上に出番が多い」と、意外と評判が高い育児アイテムのひとつです。

そこで今回は鼻水吸引器を使う上で知っておきたい乳児の鼻水にまつわる基礎知識や、鼻水吸引器の種類、鼻水吸引器を選ぶポイントなどについて詳しく解説します。

目次

鼻水吸引器を使うなら知っておきたい乳児の鼻水の基礎知識
乳児の鼻水の特徴
 乳児が鼻水を出しやすい理由
乳児の鼻詰まりを放置すると?
 ミルクがうまく飲めない
 まぶたの腫れや目ヤニの原因になる
鼻をすすると起こりうる症状
 中耳炎(ちゅうじえん)
 副鼻腔炎(ふくびくうえん)
 後鼻漏(こうびろう)
乳児の鼻水の対処法
 ベビー綿棒での鼻水ケア
 蒸しガーゼや蒸しタオルでの鼻水のケア
 鼻水吸引器での鼻水のケア
鼻水吸引器の種類
 電動ハンディタイプ
 電動据え置きタイプ
 手動タイプ
鼻水吸引器選びのポイント
 ポイント1 我が家の事情に合ったものを選ぶ
 ポイント2 ノズルの形状をチェック!
 ポイント3 お手入れのしやすさ
鼻水吸引器の上手な使い方
 吸引をする時の姿勢
 ノズルの位置
 吸引時の注意点
鼻水吸引器を育児の強い味方にしよう

乳児の鼻水の特徴

漫画などで、寝ている人の鼻からぷっくりとシャボン玉状の物が飛び出ている「鼻ちょうちん」が描かれることがあります。しかし多くの人は、それはあくまで漫画の世界のことだと考えているのではないでしょうか?

ところが子育てを経験してみると、乳児はよく鼻ちょうちんを出すので驚いた、というママやパパが少なくありません。つまり大人と比較すると、乳児はそれほど鼻水が出やすいのです。では、どうして乳児は鼻水を出しやすいのでしょうか? 

乳児が鼻水を出しやすい理由

花粉に限らずホコリやハウスダストなどは、主に呼吸をすることで体内に取り込まれます。人間は基本的に鼻呼吸をしているので、これらのアレルギーの原因となる成分(アレルゲン)は、まずは鼻腔内に取り込まれます。

鼻腔は、外から取り込まれた空気に対してフィルターのような役割をしています。具体的には鼻粘膜から粘液を分泌し、取り込まれた空気の温度や湿度の調整をし、さらには細かいホコリなどを除去しているのです。鼻粘膜にアレルゲンが付着すると、体を守るためにそれらを排出しようとして粘液が通常より多く分泌されます。これが鼻水の正体です。

アレルゲンに限らず、風邪のウイルスなども体にとっては異物であるため、同様の現象が起こります。花粉症の人が花粉を吸い込んだり、風邪を引いたりした時に鼻水が出るのはこの仕組みによるもので、この構造そのものは大人も乳児も変わりありません。

しかし乳児の場合鼻腔の中が大人よりも狭く、構造も未熟で、鼻と耳をつなぐ「耳管(じかん)」が太く、水平になっているため、大人と比較するとほこりやウイルスが鼻腔内に入りやすい構造になっています。そのためどうしても、乳児は大人よりも鼻水が出やすいのです。

乳児の鼻詰まりを放置すると?

鼻水は鼻の穴から出るだけではなく、鼻腔内で詰まるといわゆる「鼻詰まり」という症状を起こします。鼻詰まりはほとんどの人が経験しているはずなので、鼻が詰まった時の不快感や頭痛のつらさは実感として理解できるはず。

鼻詰まりが原因で不快な症状が出るのは、乳児も大人と同様です。しかし乳児は自分で「鼻が詰まって不快だ」と訴えることはできません。いくらあやしても機嫌が悪い、いつまでもグズっている、なかなか寝付かないといった態度でその不快感を表すため、世話をする大人も辛いものです。

またこうした気分の問題だけではなく、鼻詰まりの状態を放置すると、次のような身体症状が出る場合があります。

ミルクがうまく飲めない

乳児がミルクを飲む時は口が塞がれているため、必然的に呼吸は鼻呼吸が中心になります。そのため鼻が詰まっていると授乳中に息がしづらく、ミルクを飲むのを嫌がる、そもそもうまくミルクが飲めないといったことが起こります。

まぶたの腫れや目ヤニの原因になる

耳と鼻が耳管で繋がっているように、目と鼻は鼻涙管(びるいかん)で繋がっています。鼻詰まりがあるとこの鼻涙管の出口がふさがれてしまい、涙が逆流することでまぶたが腫れる、目ヤニが多く出るといった症状が出る場合があります。

鼻をすすると起こりうる症状

大人でも不快な鼻詰まりの症状ですが、鼻をかむことで不快な症状が軽減されることがあります。

しかし乳児は、自力で鼻をかむことができません。発達には個人差がありますが、自力で鼻がかめるようになるのは2〜3歳からだとされています。

鼻がかめない子どもは、無意識に「鼻をすする」、つまり外に出さずに内側に引っ込めてしまう場合がありますが、実はこれは非常に危険な行為です。

鼻水が出る仕組みで解説しましたが、鼻水の中にはホコリやアレルゲン、そしてウイルスなどが混じっています。鼻をかめば、鼻水と一緒にこれらの成分も体の外に排出することができますが、鼻をすすってしまうと体内のより深い部分にこれらの物質が取り込まれてしまい、思わぬ疾患の原因になることがあります。

鼻をすすることによって発症しやすくなる疾患には、次のようなものがあります。

参考サイト:小児急性中耳炎 - 日本耳科学会
参考サイト:好酸球性副鼻腔炎 | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院

中耳炎(ちゅうじえん)

鼻をすすった瞬間中耳内の圧力が下がるため、細菌やウイルスを含んだ鼻水が耳管を通じて中耳に侵入しやすくなります。すると鼻水に含まれている細菌が引き金となり、一時的に中耳に炎症が起きる急性中耳炎や、中耳に水がたまる浸出性中耳炎などを発症する場合があります。


中耳炎は鼻がうまくかめない乳幼児にとても多い疾患で、0~3歳までの間に約7割の子どもが経験するともいわれています。主な症状は耳の痛み、高熱、耳の聞こえが悪くなる、耳だれ(耳から分泌物が出ている状態)などです。

特にやっかいなのが浸出性中耳炎です。浸出性中耳炎を長期間放置すると、鼓膜がへこんで中耳の壁に癒着が生じる癒着性中耳炎や、同じく鼓膜の一部が内側にへこみそこに耳垢などが溜まって塊となり、最終的に外部の骨を溶かして内耳や神経を破壊してしまう真珠腫性中耳炎など、別の疾患を引き起こす原因にもなります。


特に真珠腫性中耳炎の場合、治療には手術が必要になることがほとんどなので、子どもにとっても保護者にとっても負担となります。

副鼻腔炎(ふくびくうえん)

鼻の穴の中(鼻腔)には骨に囲まれた空洞があり、この空洞部分は副鼻腔と呼ばれています。副鼻腔炎は、副鼻腔にウイルスや細菌が入って炎症を起こした状態のことで、副鼻腔炎になるとネバネバとした黄色い鼻水が出る、頭痛や発熱、体がだるい、匂いがわかりづらくなるといった症状が出ます。

後鼻漏(こうびろう)

後鼻漏は、主に副鼻腔炎にかかることで引き起こされます。副鼻腔炎にかかると、ネバネバとした黄色い鼻水が出ます。その細菌を含んだ鼻水が喉に流れることで喉に炎症が起きるのが後鼻漏です。

後鼻漏を発症すると咳が出る、気道が狭くなってミルクの飲みが悪くなる、それらが原因で寝つきが悪くなるといった症状が出ます。そしてそのまま長引けば、体力や免疫の低下を引き起こします。

乳児の鼻水の対処法

このように「子どもはよく鼻水を出すもの」と、そのまま放置していると、機嫌が悪くてずっとぐずっているだけではなく、時には重篤な疾患の原因となることがあります。

そのためひと昔前は、保護者が乳児の鼻から直接鼻水を吸い取ってあげることを専門家が推奨することもありましたが、風邪といったウイルス性疾患が原因の場合には、鼻水の中にもウイルスが含まれているため、そうした行為は保護者自身に感染のリスクが生じることから今ではあまり推奨されていません。

では、乳児の鼻水に対する家庭でのケアはどうすればいいのでしょうか? 

乳児の鼻水のケアには以下の3つの方法がおすすめです。

ベビー綿棒での鼻水ケア

ベビー綿棒での鼻水のケアは、赤ちゃんの鼻の入り口に鼻水が固まっている時に行うのがおすすめです。鼻の入り口にベビー綿棒をあて、優しく取ってあげましょう。

鼻づまりの時は、ベビー綿棒を使ってくしゃみを促しましょう。鼻の入り口をベビー綿棒でくすぐるようにすると、上手にくしゃみを促してあげることが出来ます。

蒸しガーゼや蒸しタオルでの鼻水のケア

鼻は血行が悪くなると粘膜が固まり、結果鼻が詰まりやすくなります。鼻水が固まって鼻が詰まってしまうと、ベビー綿棒で鼻水をケアするのは困難です。

固まって詰まった鼻水をケアするには、鼻水を柔らかくする必要がありますので、赤ちゃんの鼻の下に蒸したガーゼや蒸したタオルを優しく当ててあげましょう。こうすることで、鼻の血行が良くなり鼻水を柔らかくしてから取り除いてあげることが出来ます。

鼻水吸引器での鼻水のケア

鼻水吸引器とは、文字通り鼻水を吸引するための機械になります。電力を使うものを鼻水吸引器というのに対し、手動のものは単に「鼻吸い器」と呼ばれることもあります。

鼻水吸引器は、生後すぐからでも使用することが出来る便利アイテムの1つです。赤ちゃんの詰まった鼻水を効率よくしっかりと吸引してくれます。前述したように、子どもが自力で鼻がかめるようになるまでには生まれてから2〜3年かかります。その間乳児は季節を問わずに頻繁に鼻水を出すので、出産準備品として備えておいても損はないでしょう。

鼻水吸引器を使用する際は赤ちゃんの鼻の構造を理解し、誤って粘膜を吸ってしまわないように気を付けましょう。

鼻水吸引器の種類

鼻水吸引器には、大きく分けて3つのタイプがあります。ここではその種類と合わせて、それぞれのメリット、デメリットを紹介します。最近ではこれらのタイプに加えて、手動と電動の特徴を併せ持った「真空ポンプ式」の鼻水吸引器も登場しています。

電動ハンディタイプ

充電式や電池などを用いて使う、ハンディタイプの鼻水吸引器です。最大のメリットはどこでも持ち歩ける点で、出先だけではなく、家の中でも電源などを気にせずどこでも使えて便利です。

一方デメリットとしては、やや吸引力が弱めな点が挙げられます。

電動据え置きタイプ

コンセントに繋いで、据え置きで使うタイプです。最大のメリットは、吸引力が強い点です。さらに鼻水の状態などに合わせて吸引する力をダイヤルひとつで調整できるなど、便利な機能がついた製品も多いのが特徴です。

デメリットとしては、モーター音に乳児が驚いてしまうことがある点、そして外に持ち出して使えない点などがあります。またノズルを乳児の鼻に差し込むタイプの場合、加減が難しい点もデメリットとして挙げられます。

手動タイプ

保護者がノズルを口でくわえて吸い上げるスポイト式やポンプ式など動力を使わずに吸引するタイプです。手動タイプは動力を使わない為、持ち運びが可能である事に加え、価格の安さも魅力です。

スポイト式は引力がソフトなので、育児初心者のパパやママでも安心して使える反面、デメリットとしては吸引力が弱い点、そしてスポイト式の場合には力加減の調整が難しい点などが挙げられます。また、口で吸うタイプの場合は鼻水を吸い込んでしまう可能性があるので、逆流防止構造になっているものを選びましょう。

ポンプ式は知母時(ちぼじ)のように真空構造のタイプを選ぶと粘りの強い鼻水も取れる為、スポイト式の弱点である吸引力の弱さをカバーする事も出来るでしょう。

鼻水吸引器選びのポイント

こうした各種類の鼻水吸引器の特性を踏まえ、実際に購入する際にはどういった点に注目して選べばいいのでしょうか?

ここでは、鼻水吸引器選びの3つのポイントを紹介します。

ポイント1 我が家の事情に合ったものを選ぶ

電動式は吸引力が強いだけに、なんだか圧をかけすぎてしまいそうで怖いといった場合や、その逆で手動式はうまく扱えないなど、使い手によって得手、不得手がどうしてもあります。さらに頻繁に鼻水を出すタイプの子なので、吸引力よりも持ち運びの便利さで選びたいといった場合もあるでしょう。

そこでまずは性能よりも、どんな使い方をしたいか、どんな使い方なら安心して気軽に使えるかなど、我が家の事情に合った製品を選ぶのが一番です。製品選びに迷って決められないようなら、まずは価格が安い手動式を購入して、扱いに慣れてきてもっと吸引力が高い製品が欲しいとなったら電動式を買い足すといった方法もあります。

ポイント2 ノズルの形状をチェック!

ノズルは乳児の肌に直接触れる部分なので、形状は十分に吟味してください。乳児の繊細な肌や鼻の粘膜を傷つけないように、ノズルの先端は丸みがある形状で、弾力性があり柔らかいシリコン素材などでできているものがお勧めです。

ポイント3 お手入れのしやすさ

繰り返しになりますが、鼻水には細菌が含まれているので、使用後はしっかりと洗浄、できれば消毒までする必要があります。そのためできるだけシンプルな構造で、使った部品はすべて分解してしっかりと洗浄や消毒できるタイプの製品を選びましょう。

鼻水吸引器の上手な使い方

乳児の小さな鼻の中にノズルを入れて鼻水を吸い取るのは、初めは誰でも怖いものです。しかし鼻の構造をしっかりと把握し、どこを狙えばいいのかがわかれば恐怖心が軽減されるはずです。

そこで実際に鼻水吸引器を使う際の注意点を、いくつか紹介します。

吸引をする時の姿勢

吸引をする時の赤ちゃんの姿勢は、仰向けに寝かせる、抱っこするなど、赤ちゃんが安心できる姿勢をとります。いずれの場合も使用中に赤ちゃんの頭が動くと危険なので、頭をできるだけ固定する必要があります。

そのため仰向けに寝かせてやる場合には、頭を足で挟んで固定する姿勢にして、上から覗き込めるような体勢をとります。抱っこの場合には、横抱きにして手で頭を押さえて固定します。

ノズルの位置

鼻腔内は、デコボコととても複雑な構造をしています。そのため鼻が詰まって苦しそうだからと鼻の奥まで吸引器のノズルを差し込んでしまうと、粘膜を傷つけてしまう場合があります。

ノズルがないタイプの場合には、吸引器の先端を軽く乳児の鼻の穴にあてがう程度に、そしてノズルがあるタイプの場合でも、鼻の穴に少し差し込む程度にします。

ノズルタイプを差し込む時には上向きに差し込みがちですが、なるべく水平に入れるように意識してください。

もし、何度トライしても十分に鼻水が吸引できない場合には、ついついより奥の方までノズルを入れてしまいがちですが、そうした場合には無理せずに専門医にとってもらうのが無難です。

吸引時の注意点

吸引時には、最初から強く吸引せず、電動式あれば圧力を調整して、そして手動式であれば力加減を調整しながら少しずつ吸引していきます。一気に強い力を加えるのではなく、軽めの圧で繰り返し吸うのがポイントです。

鼻水吸引器を育児の強い味方にしよう

鼻水をそのまま放置したり処置を誤ったりすると、その後重篤な疾患の引き金になる可能性が考えられます。そこで鼻水吸引器を適切に使うことで、状況を改善できる可能性があるのです。

育児の中に鼻水吸引器を上手に取り入れるヒントになれば幸いです。

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